2025年8月、北海道小清水町の新庁舎「ワタシノ」の前に、日本特種ボディー株式会社(NTB)のフェーズフリーモビリティ「EXPEDITION STRIKER(エクスペディション・ストライカー)」が姿を見せました。STRIKERは、日本で初めてフェーズフリー認証を取得したモビリティとして、近年全国的に大きな注目を集めております。

このたび、小清水町において、フェーズフリー導入の先進自治体である同町と、フェーズフリー概念の提唱者であるフェーズフリー協会、そしてSTRIKERを開発したNTBの三者による特別対談が実施されました。

対談のテーマは 「フェーズフリーモビリティの可能性」 です。

登壇されたのは以下の皆さまです。

  • 小清水町町長 久保 弘志
  • 一般社団法人フェーズフリー協会 代表理事 佐藤 唯行
  • 日本特種ボディー株式会社 代表取締役社長 蜂谷 慎吾

本記事では、対談内容を丁寧に整理し、フェーズフリーの本質やEXPEDITION STRIKERがもたらす未来の地域社会像について詳しくお伝えいたします。

スペシャル対談は公式YouTubeでも公開中です

対談動画URL:https://youtu.be/p2JwoRXXmyQ

1.小清水町が“フェーズフリーのまちづくり”に取り組む理由

ブラックアウトをきっかけに生まれた強い課題意識

小清水町がフェーズフリーを行政運営の中心に据えた背景について、久保町長は次のように振り返ります。

「北海道東部地震でのブラックアウトは、私たちの暮らしに大きな衝撃を与えました。冬の厳しい環境の中で電気が止まることが、どれほど危険を伴うのかを痛感しました。この経験から、単なる防災拠点の整備ではなく、町全体で命と生活を守る体制づくりが不可欠だと考えるようになりました。」
その課題意識をもとに誕生したのが、新庁舎「ワタシノ」です。

「ワタシノ」は、
防災機能 × 行政機能 × コミュニティ機能 × まちの賑わい
を兼ね備えた全国的にも珍しい拠点であり、日常と非常時を分けないフェーズフリーの考え方を体現した施設といえます。

2.フェーズフリー思想が全国に広がる理由とは

フェーズフリー協会の佐藤代表は、フェーズフリーが注目される背景には“日常と非常時の分断を超える視点”があると語ります。

「非常時のためだけの備え」では広がらなかった

「従来の防災は、いつ起こるかわからない非常時に備えるための“特別な行動”を求めるものでした。しかし、普段の生活で役に立たないものを準備し続けることは、多くの人にとって負担でした。」

フェーズフリーは、この前提を根本から覆した概念です。
“普段から便利で役に立ち、非常時にもそのまま活躍するものを選ぶ”
という考え方は、多くの人にとって無理のないアプローチでした。

実例が生まれたことで、概念が一気に理解され始めた

「抽象的な理念だけでは理解が進みにくいですが、小清水町の新庁舎やSTRIKERのように“形になった実例”が生まれたことで、多くの方が『これがフェーズフリーなのだ』と直感的に理解されるようになりました。」
STRIKERは、まさにその象徴となっています。

3.STRIKERは“関係性”を設計した、新しい形のキャンピングカー

STRIKERには、従来のキャンピングカーにはなかった明確な特徴があります。それは 「関係性(Relationship)」という視点を組み込んだ設計 です。
キャンピングカーといえば、一般的には
“ライフラインから独立したオフグリッドの暮らしができる車”
という価値が中心ですが、STRIKERはそこに以下の3つの新たな関係性を加えています。

① 車内での「人と人の関係性」を整えるレイアウト

運転席からキッチン・居住スペースまでを見通せる構造により、

  • 同乗者同士のコミュニケーション
  • 子どもや高齢者への目配り
  • 非常時の安否確認

がスムーズに行えるようになっています。
これは、安心感と安全性を同時に高める“フェーズフリー的設計”と言えます。

② 荒れた路面でも安定して走行できる「車体と路面の関係性」

蜂谷社長は、STRIKERが持つ特殊な構造を次のように説明します。
「災害時には道路が大きく波打つことがあります。通常のキャンピングカーは車体が硬く、タイヤが浮いてしまうことがあるのですが、STRIKERはボディーがよじれる構造のため、常に四輪が路面をしっかり捉えます。」
これは、電車の連結部分の柔軟な構造を参考にしたものです。
これにより、悪路での走破性能や運転者の負担軽減が大きく向上しています。

③ 車内と屋外をつなぐ「空間の関係性」

STRIKERは、電気や水を車外へ引き出して使える機能を備えており、以下のような活動を柔軟に行うことができます。

  • 災害ボランティアの拠点
  • 屋外での相談・会議
  • 農業やイベントでの接客
  • 地域活動の出張支援

単なる車両を超えて、“移動型の活動拠点”として機能する点が、多くの自治体から支持を受けています。

4.自治体視点で見たSTRIKERの価値とは

久保町長は、STRIKERが自治体運営にもたらす価値を次のように述べられました。

庁舎が被災した場合でも行政機能を移せる

「もし庁舎が被災したとしても、STRIKERを中心に行政チームが現場に向かうことができるという点は、大変心強いと感じています。」
STRIKERには、電源・空調・照明・机・通信機能などが備わっており、
臨時の行政拠点としても十分に機能します。

広域に住民が点在する地域でこそ活きる

広い面積を持つ小清水町のような自治体では、
「必要な住民の元へ行政が移動する」
という考え方が非常に重要になります。
STRIKERはそのための強力なツールとなり得ます。

普通免許(AT限定)で運転可能という“負担の少なさ”

蜂谷社長は次のように語ります。
「STRIKERは見た目よりも小回りが利き、AT限定免許で運転できますので、若手職員の方や女性の方でも安心して扱っていただけます。」
これは導入に向けた大きな後押しとなります。

5.現地でSTRIKERを体験した町民の声

対談当日、STRIKERを見学された町民の皆さまからは、次のようなお声が寄せられました。

■ 子どもの保護者の方 A氏
「冷蔵庫やキッチンなど設備が充実しており、非常時に子どもを守れる安心感があります。」
■ 子どもの保護者の方 B氏
「車内はとても清潔で、視界が広く、運転しやすい車だと感じました。」
■ 農業従事者の方 C氏
「イベントにおけるお客様の受け入れや、現場作業にも使えると感じました。一次産業にも可能性があると思います。」
住民の皆さまの声からも、STRIKERが
行政・産業・暮らしのすべてに寄り添うモビリティ
として期待されていることがわかります。

小清水町主催「フェーズフリーツアー」参加者からも多くのお声を頂きました。

6.フェーズフリーモビリティが描く、これからの地域社会

対談の締めくくりとして、蜂谷社長は今後の展望を次のように語りました。

「日常でも非常時でも、暮らしを支えられるモビリティとして、STRIKERをさらに進化させ、より多くの地域の皆さまに貢献できる存在にしていきたいと考えております。」

フェーズフリーを積極的に導入する小清水町との連携は、
これからの日本の自治体における“新しいまちづくりの姿”を示しているといえます。

STRIKERは今後も、

  • 災害に強い地域づくり
  • 産業の活性化
  • コミュニティの再生
  • 多様な働き方・暮らし方の実現

に貢献しながら、フェーズフリー時代の新しいモビリティとして進化し続けてまいります。


本記事の対談動画をNTB公式YouTube「チャンネル日本特種ボディー」で公開中です。

フェーズフリースペシャル対談:https://youtu.be/p2JwoRXXmyQ


日本初のフェーズフリー認証キャンピングカー「EXPEDITION STRIKER」の特設サイトを公開中です。

URL:https://ntbcamp.co.jp/striker-phasefree/

NTBは「フェーズフリーアクションパートナー」です。

わたしたちは、フェーズフリーの価値観を理解し、賛同しています。
わたしたちは「フェーズフリー」を合言葉に、繰り返される災害への解決策として、
モビリティを通じて課題解決に取り組んで参ります。